医療保険を取り巻く状況に目を向けますと、2025年には団塊の世代の方々が全員75歳以上となることから、高齢者医療費の急激な増加が見込まれます。一方で、その方達を支える現役世代の人口が減り続けることにより、このまま何の手も打つことなく団塊の世代の方々が75歳になり始める2022年を迎えてしまうと、健康保険料率を引き上げざるを得ない状況となります。
そのような状況の中で協会けんぽは、従来から行っている基盤的な業務を、より少ない人数で、ミスなく、効率的に実践できるような業務の体制作りと、システム改修を行います。そして、そこから生み出される、できるだけ多くの人的資源を、加入者のための健康づくり・疾病予防・疾病重症化予防などの保健事業に投入し、医療費の適正化に資することができるようにしようと考えています。
協会けんぽでは、2013年より健康宣言事業を開始し、現在まで47都道府県において地方自治体、経済団体、金融機関などと連携を図り、2019年6月時点では32,223社の健康宣言を達成し、2018年に日本健康会議で新たに設定した、30,000社の目標も前倒しで達成することができました。今後も、健康宣言事業所数の拡大に努めてまいりますが、同時にその中身の充実にも力を入れていきたいと考えています。例えば、近年増加が続いている「精神および行動の障害」による休業者の問題です。この課題には、我々保険者だけで何か防御策を考えても、根本的な解決につながりません。事業主、従業員、保険者、医療関係者、家族などすべての関係者が協力して取り組んでいく必要があります。
そういったことも含めて、中小企業健康経営推進協議会で発信されて行かれる情報が刺激となり、より多くの企業の健康宣言・コラボヘルスにつながり、健康で明るい社会につなぐことができるようになることを期待しています。
安藤 伸樹
全国健康保険協会 理事長